説明
: 蛞蝓(ナメクジ)は陸に生息する巻貝(軟体動物門腹足綱)のうち殻が退化しているものの総称。体長6センチくらい。体は細長く、前端に触角があり、体表は粘液に覆われる。湿った所を好み、草葉や野菜を好んで食べる。刀装具の画題では三竦み(さんすくみ)のひとつとしてあらわされる。三竦みは、三つの者が互いに得意な相手と苦手な相手を一つずつ持つことで、三者とも身動きが取れなくなるような状態。蛇(ヘビ)は蛙(カエル)を捕食し、蛙は蝸牛/蛞蝓(カタツムリ/ナメクジ)を捕食する。そして(迷信であるが)蝸牛/蛞蝓は食べられた蛇を溶かすという。そのことから、蛇は蝸牛/蛞蝓を恐れ、蝸牛/蛞蝓は蛙を恐れ、蛙は蛇を恐れて、三者とも牽制し合って身動きが取れなくなる。この状態を三竦みという。本作は、おそらく小柄や他の刀装具に蛇と蛙が描かれた三竦みの画題。笄の形状から江戸時代後期、素銅から庄内金工作か。三竦み図は争いを避ける心得として好まれた。