寸法
: 左縦: 1.7cm 右縦: 1.8cm
左横: 2.5cm 右横: 2.6cm
説明
: 「三番叟(さんばそう)」は歌舞伎の演題として知られているが元は能楽からでた天下泰平、五穀豊穣を祈る舞。足利時代では最も重要な曲目であり、お目出度い席では三番叟が演ぜられた。目貫では、祐乗、宗乗、真乗などから一般古後藤と称せられるものなど桃山時代の名工が多く製作。その後後藤十代宗家の廉乗あたりまで見受けられる。顔立ちがきりりとして、動作がのびのびし、少しもかじかんだところがなく象嵌が精巧。こうした三番叟が、名人上手の作と謳われている。本作は後藤宗家七代顕乗と極められた三番叟図目貫。顕乗は後藤家中興の祖といわれる名人で、覚乗と共に江戸時代初期を代表する装剣金工家。後藤徳乗(宗家五代)の次男として天正十四年(1586)に生まれ分家して理兵衛家を創立。元和三年(1617)実兄栄乗(宗家六代)が没し一族合議の結果、宗家七代を継承する。寛永五年(1628)宗家の家督を兄栄乗の次男光重に譲る。その後従兄弟の覚乗と交替で隔年加賀国金沢に出張し前田家から扶持を給される。寛文三年(1663)78歳没。京都住。顕乗のころの目貫の裏の根は、陽根のみとなり、四個の力がねでしっかり止める新しい手法となった。本作は顕乗極めの格調高い三番叟図目貫。2024年5月審査で特別保存審査合格。