説明
: 本作は、精緻な赤銅魚子地に、枝に実る二果の柿を高彫据文し、金色絵を巧みに施した枝柿図小柄。太い枝元を鐔側に置き、枝先を鐺側へ伸ばす構図は、小柄における草木図の通例に沿ったもの。特筆は二果の柿の表現で、本来、柿は枝から下方へ垂れて実るが、本作では二果とも逆に、実が上方を向いて成るように表されている。枝そのものは正しい方向に配されていることから、図全体を逆向きにしたものではなく、柿の実だけを意図して逆さに表現したところが興味深い。作者は浜野直寿。直寿は浜野矩随門の名工・浜野直随に学び、浜野派の高彫色絵の技を受け継いだ金工。技量を備えた金工が柿の実り方を誤って制作したとは考えにくく、自然の姿をそのまま写すことよりも、果実と萼(へた)の見え方に変化を持たせる意匠上の趣向であろうか。あえて通常とは逆に二果の柿を配したところには、何らかの趣向や暗示が込められているように思われる。精巧な彫技と金色絵の美しさに加え、一見して気付きにくい謎を秘めた構図にも直寿の趣向が窺われ、見る者に想像を巡らせる興味深い枝柿図小柄。平成10年(1998)特別保存刀装具審査合格。