50万円程の特別保存刀装具赤銅鐔が売れ、金額が20万円超でしたので日本郵便(東京国際郵便局)に輸出申告の手続きを委任し、購入者の住むアメリカにEMSで品物を送付しました。
ところが税関で「文化庁の輸出監査証明がないので通関できない」といわれ発送がストップしてしまいました。
文化庁の輸出監査証明は、国宝や重要文化財の国指定文化財が国外に散逸することを防ぐためのもの。日本刀であれば指定数が多く、かつ物件の特定が困難なため文化庁の証明書が必要なことは理解でき、証明書発行に数週間待つ手続きを全ての輸出刀剣でおこなっています。しかし、鐔は指定数が少なく、かつ画題等で物件の特定が容易です。
納得できず抗議しましたが、東京国際郵便からは「他の業者は輸出監査証明を添付している」といわれ輸出監査証明の趣旨を説明しても埒があきませんでした。
「刀装具でも文化庁の輸出監査証明添付が要件」となっては一大事です。
そのため文化庁美術学芸課調査指導係と日本美術刀剣保存協会に連絡して情報を提供いただき、直接東京税関外郵出張所に交渉しました。
その結果、鐔の国指定品数は現在22点しかなく、写真や画題名称等で特定が容易であること。その情報は文化庁の国指定文化財等データベースで「鐔」検索により確認できることを伝えて、文化庁の輸出監査証明なしで無事に通関できました。
税関は関税法第70条(他法令の確認)を根拠として、この鐔が国宝・重要文化財の場合は文化財保護法違反となるため、当該輸出品が国指定品であるかもしれないという疑義がある場合に、文化庁の輸出監査証明の添付を要求するそうです。
しかし国指定の文化財は基本的にその所在が国で把握されており、売買は勝手にできません。
犯罪を未然に防ぐための理由は理解できますが、限りなく起こり得ないことを想定して屋上屋を架すことには意味がありません。実情を把握し無用の手続きが要求されない事を望みます。