本日千葉県銃砲刀剣類の登録審査会がおこなわれ行ってまいりました。
千葉県では年間4回開催されますが、毎回登録証の訂正で数振、多い時には10振もの登録証記載ミスを起因とする刀剣審査のために千葉市の会場まで出向きます。
今回は、「目くぎ穴の記載漏れ」と「裏年紀の記載違い」等でした。登録台帳や登録証記載事項が現物と相違しているケースは夥しく多く、所有者変更届を遺漏なくおこなう刀剣商にとっては大きな負担となっています。
所有者変更届をおこなう者が登録証の相違を訂正しようとすると、「記載事項の不一致」→「現物確認審査」→「一致しないと判断」→「全国照会」→「(該当先なく)新規発行」というプロセスになり、発行先教育委員会と千葉県教育委員会にまたがり手続きは煩雑です。かつ新規登録証代金6,300円を負担しなければならなくなるケースが大半です。手間のみならず費用の負担もばかになりません。
登録証作成事務方の専門知識が豊富であればかなり間違えは防げると思います。知識の向上が期待されます。
今回は訂正の他に、委任を受けて、31振の発見届刀剣審査を代理で受けました。
その刀剣は相続を受けた旧家より発見され、錆はもちろん、外装がないものなどもあり荒れた状態でした。軍刀や焼入のない刀剣も混在しておりそれらは登録対象外となりました。中には鍛錬焼入され映りも顕著な出来の良い満鉄刀もあったのですが、洋鉄は対象外と説明を受け渋々納得いたしました。
3テーブルに分かれて審査されましたので、刃長15cm未満のために登録不要で処理されようとしていた刃長14.1cmの短刀に後で気づき、敢えて登録証交付を依頼しましたところ、面倒がられたのでしょうか、「出来が悪いから対象外だ」と言われました。
鍛錬も焼入もあり玉鋼でつくられていても、出来が悪いと登録証は交付されないとは知りませんでした。刀剣商として毎月数百振の刀剣を見ますが、私が見る限りその短刀は登録が交付されないほど出来が悪いとは思えません。今回でもその短刀より出来の悪い刀剣が登録証交付になっています。そこで、「主観できめられては納得がゆかない」と食い下がると「主観で決めるんだ。作位が低い、茎仕立てが悪い」と保存審査のような規準の説明です。「茎棟鑢もはっきりしており茎仕立てが悪いとは思はない」と続けると「では他の審査員に見てもらおう」とのこと。私が審査員の中で一番刀を知っていると思っている職方の方は「私は登録証をつけて良いと思う」と発言してくれましたが、他の審査員は顔色を窺うようで「神社のお土産品のようだから駄目ですね」とこの審査員の判断が支持されました。審査会場で注目されるこのやりとりの中、その審査員の顔を潰すようなことが起こるはずはありません。
日本刀の定義(玉鋼を鍛錬焼入れした刀剣)に合致していれば登録証は交付されるべきで、出来栄えという主観を判断材料に入れるべきではないと思います。
その審査員はこれまで私が審査を受けたことのない方でした。審査員の名前を尋ねても名乗ってもらえず、この方がどれだけ日本刀を理解しているのか理解もできずに会場を後にしました。
日本刀の普及に頑張りますが、今日のような経験をするととても空しくなります。
-追記- 平成26年12月22日
登録審査会において、「作位が低い」「茎仕立が悪い」を理由に登録証を交付されなかった件は、他県の審査員に尋ねましたところ、「その判断は誤りであるので文化庁に確認したほうが良い」といわれました。そこで、文化庁の担当部署に事情を報告しましたところ、「(玉鋼・鍛え・焼入があるにもかかわらず)主観による作位を登録証公布の判断基準にするべきではない」とコメントを頂きました。その旨を千葉県教育委員会に伝えましたところ、既に文化庁より連絡を受けており、担当部署からは、「基準の徹底をはかります」とコメントを得ました。
登録証の問題は、私のような刀剣商でもなければ、審査員のいわれるままに従ってしまうでしょう。しかし、その審査員が誤った認識であるなら、誤った判断のまま処理が続いてしまいます。情報公開の今の時代ですから、登録審査基準は非公開などといわずに、明文化された基準を公開してみなが納得する審査にしてもらいたいものです。